読者とヒロイン、置いてけぼり……。
2006-03-24 Fri 21:30
水に棲む花 5 (5)
篠原 千絵
4091303560

……正直あっけにとられている内に終わってしまった↓ 簡単に言うと

読者置き去り・完全放置

という感じ。いやあ、まああの展開ならこういう流れでこう終わる、てのはそれなりにわからないでもないんだけど、納得行くか、というとちょっと微妙。最初は楽しみだったのになー。どうなるのかとわくわくしてたんだけどなー。

少女まんが、つーのは「野郎キャラが裏の主役だ!」なのだそうな(ある現役プロ少女まんが家がブログでそう担当に言われた、とのこと。「裏の主役は野郎キャラ。よって野郎に力を注ぐべし!」みたいなことを言われたらしい)。まあそれは完全否定はしない。確かに男性キャラも重要なのだ。なのだが、私としては主体は主人公の少女なり女性であって欲しい、手を抜かずちゃんと描写して欲しい、と思ってしまうので、野郎が単に格好いいだの、その程度では面白い、とは思えないのだ。
今回は、終盤に進めば進むほどヒロイン放置状態。何しろ、……4巻で死んじゃうから(一応、ね)。その後はひたすらヒロインが恋した男性と、そのライバルとの闘争・抗争のよーなものが延々繰り広げられる。読むごとにアタマの回りにクエスチョン・マアクの数が増えてく増えてく。まいったな、これは。

ヒロイン・六花(リッカ)の命を喰らうことで「本来の姿」白龍に戻ることの出来た楪(ゆずる)。自分との闘いだけを望んできた黒龍こと出水(いずみ)。互いの本来の姿となって渡り合うものの、力は互角。
古来、天と水とは白と黒の龍によって治められてきたのだという。白龍は冷たき氷の神、黒龍は熱き火の神。相容れぬ同士が戦うことこそが天地の理。
出水はひたすら白龍だけを追い求めてきた、らしい。ここでまずゲンナリ。どうもヒロインはその白龍に繋がる者であるが故につきまとわれていた模様。そして、彼女の代わりでしかなかったもうひとりのリッカこと「立夏」。彼女は永い時を出水と共に過ごし、彼によって生き長らえさせられ、彼の一時の欲望を埋めるためにだけ存在していたようなもの。彼女が恐れていたのは、彼によってもたらされた永遠の命が尽きることではなく、彼を失うこと、彼から見放されることだった。深かった愛情故に、強まる憎悪と嫌悪の念。

とにかく、ひたすら野郎ふたりが龍の姿でにゃんこよろしくじゃれている……いや、戦ってるのが延々続く。あのー……、これ、ファンタシィとはいえ少女まんがでしょ↓ ある意味絵にはなるかもしれんが、少女まんが的「華」は皆無だぞ。おまけにヒロイン放置。もうひとりのヒロインもまた愛憎に苦しみながら、にょろにょろし合う龍2頭の姿を見上げてるしかなく。

なんぢゃこれは(涙)。

作者が失敗作だと語り続けてきた「蒼の封印」の方が、何だかんだ言っても余程ちゃんと「少女まんが」していて面白かったぞ。何しろ、ヒロインとヒーローは相対する一族の長、という設定だ、否が応にも盛り上がる要素だった(少女まんがは恋愛がメインに扱われることの多いジャンルだが、近年「障害」と呼べる要素があまり無くなってきた為に「これだ!」という作品が生まれにくい、みたいなことも言われていたし、実際そうなので、恋愛モノを盛り上げる「障害」をどういうものにするかは悩む所であろう。ファンタシィという括りやそういった世界観はそういう意味では便利だ)。
「天(そら)は赤い河のほとり」でも野郎ふたりが相手にだけは負けたくない、とガチでタイマン勝負もはったが、それだって長い物語の彩りでしかなかったぞ。それでよかったのだ。それで十分だった。
しかーし! ……何で野郎同士のン千年以上の時を隔ててのじゃれ合いに付き合わされねばならんのだー!!

最初の頃こそヒロインに降りかかる厄災と、それから守ろうとする男、絡んでくる謎の人物たち、という構図だったけれど、最後の最後にはこんな所に着地、ですか。いやもう何て言っていいのか↓

途中からヒロイン不在とまでは行かないけれど、かなりヒーローの方に重点が置かれてしまったかのようで、何だかごっつい残念。これまでの「定番」の流れから外れた、という意味では画期的というか、意義のある作品なんだけれど、自分の中の「少女まんが」というものからはちょっと逸脱しちゃったかな、という気がする。
篠原作品の、能動的かつ行動的なヒロイン(状況に流されてそうならざるを得ないヒロイン、も含む)の活躍が観たかったんだけどなー……。もう今回の表紙の六花の顔が別人だよ↓ 作中ではもう少しふっくら丸みを帯びた、ちゃんと「少女」顔なのに、ちょっと育ってるじゃん↓

読むひとが読めば、ややホモホモしい展開だったりするのかも(でも、萌えはしないような気がする)。出水がこれでもか、と楪に「だけ」固執するので尚更「……」という気分だし。リッカたちは彼とまみえるための小道具、という扱いだよ……なんだそりゃ。
こうしてみると、「ベタであること」も大事なんだな、と思う。「ベタ」であっても面白く読ませる「何か」があればいいだけのことで。奇を衒うだけが能じゃないな、と。いや、これも王道ではあったんです。あくまでも野郎が愛しい女を守り抜く、という筋を見れば。ただ、その部分が添え物的になってしまったのがちょっと残念かな、と。新機軸にしたかった、んだろうか。
これほどヒロインが地味な存在になった篠原作品てのは初めて見ます。

ま、何にせよこれにて完結。今は雑誌に2ヶ月に渡って前後編読み切りが掲載される模様。その後の連載なり新作に期待することにしよう。
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