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2007-05-30 Wed 22:56
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恐怖の報酬
赤川 次郎 ![]() 赤川さんの本を読むのは何年振りか。まともに読んだことがあるのは「白い雨」くらいで、もうかれこれ10年以上は前だ。 別に彼の著作を読まなかったのはやれ「読む価値は無い」とか言われがちだから、ではない。単に好みの問題だ。兄は好んで読んでいたらしく、10数冊は所有していた。 それにしても驚いたのは、するすると読めてしまうこと。平易な文章で書かれているのは元々でいらしたと思うけれど、昔と違っていつもなら文庫1冊に2〜3時間かかってしまうのに、この本は1時間かかるかかからないかで読み終えてしまった。 病院で母を待つ間に、あっさりと。 4篇の短篇から成る。平凡なOL、訳もなく上司からの子供じみた執拗な嫌がらせを受け続ける会社員、かつて刑事だった男とその娘、突然強盗によって人質となってしまった女性銀行員。どれも小さな(が、些細とは言い切れない)切欠から、不可思議な世界へと足を踏み出してしまう物語。 あっさりした文章で、淡々と描かれる。それ故に、じわじわと何かが湧き起こってくるのが解る。 勿論、セケンとやらに倣って「何か、大したことないな」と言ってもいいのかもしれない。でも、淡々としているが故に、あれこれと反芻するとじんわりと、クるものが仄かにある。その「仄かさ」がなかなか悪くなかった。それに加えて、相反するあたたかなものも同時に描かれる。それ故にまた際立って見えるものがあるのだ。「仄か」に。 子供の持つ邪気、ひととして幼い男、自分には無いものを持つ人間への妬み、そんな人間の「弱さ」や目を背けていたい部分にこそ恐怖の種が潜んでいる、というのはホラー作品にはよくある傾向なのだが、これもそういう物語がほとんど。事象そのものに「恐怖」は宿らず、ひとから生まれるものにこそ宿っている。 ドロドロした怨念も、土地に纏わる因習も、どうしようもなく陰惨な事件も、この本の中には無い。何処にでも居そうな誰かに突然降りかかる厄災と、それを切欠に自分では望まぬ世界へといざなわれてゆく人々の行く末があるだけだ。 何処にでも陰があるように、笑顔や日常の何処かに潜むものがある。気づかないのではなく、気づきたくないが故に、静かに放置されたまま。 |
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