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身近な危機から身を守る本―犯罪、災害、事故で生き残るためのテクニック
柘植 久慶 ![]() 誰もが、犯罪が日常茶飯事であること知っている。しかし、それが我が身に降りかかるものだとは思わない――否、思いたくないが故に考えない。 今日、目の前で「犯罪」が行われるのを見た。しかし、あまりに突然のことで咄嗟に何が出来た訳でもなかった。 ひったくり、だったらしい。 「助けてー! 助けてー!」という叫び声が響いて何事かと見回した。見れば女性が座り込み、こめかみの辺りを抑えている。ショックを受けつつも冷静であろうとしているのが判る。見やれば、中年の男が自転車に乗って去ってゆくのが見えた。側を歩いていた男性のひとりが駆けつけ、追いかけようとしたものの、若いとは言えないそのひとが自転車相手に追いつける筈もなく、また座り込む女性が気がかりなのもあって途中で引き返した。 「大丈夫ですか」という問いに「怪我はないです、でも、」と必死で答える女性。場所柄、荷物を一切持っていないのは不自然であったし、逃げ去ったと思われる男がいたところから、私や一緒に居た人間は「ひったくり」だと判断した。 被害者女性に声をかける暇もなく、彼女はスーパーの中に入っていった。おそらく、被害に遭ったことを伝えるのだろう。追いかけるように店内に入ったものの、彼女は既に見当たらなかった。 それは、何処にでもあるようなスーパーの入口をほんの数歩出た所で起きていた。たまたまそのひとが狙われたのだろう。たまたま私や私と一緒に居た者がその時そこに居たとしたら、標的は私たちだったのかもしれない。あるいは「その時そこに居た誰か」。 それでも、自分の身にも降りかかるのだとは考えない。 考えたくない、からだ。 以前、アパート暮らしだった頃、隣の部屋の吐き出し窓の鍵の部分が割られて侵入された事件があった。 のほほんとした田舎町で生まれ育ち、それでも確かに犯罪は多々あったものの、何処かで「対岸の火事」だった。自分にとって馴染みのない、生まれ故郷から遠く離れたその土地で、突然起きた出来事。 侵入者が何故私の部屋でもなく、一部屋向こうの部屋でもなく、私の隣の部屋を狙ったのかは判らない。 がしゃり、と何かが砕ける音の後に「誰!?」という叫び声、それから悲鳴と助けを求める声。その時も、やはり咄嗟には何が起きたのか判るようで判らず(判っていても麻痺しているというのか)、ただひたすら驚いていた。 私たちが帰ろうとする頃、パトカーがスーパーの裏手に到着した。多分、店から通報があったのだろう。 住居侵入(とりあえず悲鳴で侵入者は退散したので「強盗」ではなかった)、ひったくりは被害に遭ったひとを目の当たりにしたりすぐ近くで起きた。ほかの犯罪に出くわさない保証なんて何処にもない。 あるいは、被害者にならない、という保証も(……)。 気を付けてたって危ない目に遭うんだなあ、と厭な再認識をしてしまった。被害に遭った女性のショックが早くやわらぐといいな……。 |
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