ヒトなるが故に、倒れ、そして超える。
魔人~DEVIL 1 新装版 (1)
大暮 維人 
いつも「エア・ギア」コミックスのカヴァ折り返しにこの作品タイトルが記されていて、気になっていたら新装版が出た。……えーと、それはグレっちが連載作品執筆×2+「エア・ギア」コミックス加筆修正で忙しいから間埋めちゃえついでに御新規さんもようけ増えてきましたよって知らひんかったひとにも買うてもらえるええチャンスや的企画でしょうか(身も蓋もない)。
どうやら最初はB6判だったようなので、個人的には本棚に「エア・ギア」と一緒に収納出来て嬉しいサイズ(もしこれで「天天(=「天上天下」)」も揃えたくなったらどうするんだよと自問)。
それにしてもカヴァに使った用紙にしろ帯にしろ、イヨーに紙質いいなあ(分厚い。腰巻きまで分厚いんだ! ……その分通常コミックスより高いのかよ! ←いえ、通常のコミックスよりペエジ数多いのでそのためです、多分。流石にかなり以前の作品なので加筆修正等はナシ、らしい)。
強いて言うならバイオ・ホラー……なのか?
「魔人」の異名を持つヤンキーの哲が夜と朝のあわい、紫の空が広がる中、突然遭遇した異形の者。その頃町では奇妙な事件が起こっており、哲は偶然その現場に出合わせてしまい、異形の者との対決を余儀なくされる。喧嘩慣れしているものの、相手は「人間」ではない。哲は必死に抵抗し、ソレの指に噛みつく。
「生きたまま俺の血を飲んだ奴は初めてだ」。
意識が飛び、哲の身体は上半身と下半身とに千切られて、路上に横たわった。
……の筈なのに哲は「傷ひとつない身体」で「甦る」。異形の者の血のせいで「人間」ではなくなってしまう。そこからどんどん日常が、これまでの生活や人間関係が破綻してゆく……。
まずは哲と血の繋がらない妹・里美、その友人たちとの物語から始まり、彼等はふいに姿を消す。物語は第2部的展開へと移り、ごくフツウの高校生でありながら頭脳明晰(というよりも傑出した天才)な出虎一八(いでとら・かずや)、通称デコッパ(名前のせいもあるけれど、額が広くてぷりちー。童顔で可愛いけどここぞという時はキメる。でもデコッパ…・涙)の登場と相成る。彼等の周囲でもまた奇妙な事件が発生し、異形の者たちが跋扈する。
哲が力――ある種の暴力/驚異的な能力でカタをつけようとするのとは正反対に、デコッパはあくまでも頭脳で対決する。無論、論理性に基づいて行動し、時には力でも対抗するものの、基本は論理であり知識である。その辺りの対比が解りやすいけれども明瞭で興味深い。
300年という時を独りで生き続けた異形の者は「魔神」と呼ばれ、彼によってヒトならざる者に姿を変えられた者たちは「魔人」と呼ばれる(もっとも、その「魔人」を研究した者によって人工的につくられた「魔人」も存在するのだが)。
クリィチャーのデザインがなかなか秀逸。……こういう抽斗も持ってたのかー、と何だか関心してしまった。グロいんだけど、線が綺麗なのと画面が見やすいのとでそれほどキモチワルくはない(ひとによりけりだろうけど)。
お得意のエロ要素はやや少な目、アクション満載にして脳科学、生物学的知識をふんだんに盛り込んで、テンポよく読ませる。加えて、デコッパが恋した少女・ともやデコッパの叔母が花を添えると同時に、哲とサトミもまた物語の表層と深層とで深く関わり動き回る。あれこれ錯綜しているのに不明瞭さがなくてするする読めてしまう。
デコッパが何処までも冷静沈着、哲は何処までも喧嘩上等、と対比の効いたキャラが同じ相手を敵に違う方法で闘おうとする様なんかもなかなか楽しめた。デコッパと魔神の関係、哲と魔神の関係、魔人と魔神との関係と。
ヒトとヒトならざる者とはいずれがどう強いのか。誰がどんな理由で勝利を手に出来るのか。「血」と「進化」、「脳」と「科学」。
ラストのペエジをどう解釈するか。どう解釈しても面白い。物語が更に膨らんでゆくベタであってもいいラストだったと思う。終わりは始まりであるのだと告げられているようでゾクゾクする。
コンパクトにまとまってるけれど中身は濃かった。最近毎日のように読み返している(「エア・ギア」の時もそうだったなー↓ 気に入ると毎日読む)。
魔人~DEVIL 2 新装版 (2)
大暮 維人 

ほん:まんが。 コメント(0) トラックバック(0)